◆ 弊社の取り組み ◆

文化財を未来へ受け継ぐためには、必ずどこかのタイミングで修理を行う事が不可欠となります。多くの文化財はこれまで連綿と修理が繰り返されて伝来しています。適切な時期に適切な修理や処置を行う事が肝要ですが、不適切な修理が原因で致命傷を負っている文化財も多く存在しているのが現実です。弊社では、過剰な処置は行わず、文化財を延命させるために必要と判断される処置内容をご提案するよう心掛けております。

     

◆ 本格解体修理と対症修理(維持修理) ◆

修理には大きく別けて「本格解体修理」と「対症修理(維持修理)」があります。各作品の損傷の状態や活用される頻度などに応じて適切な診断を行います。
時には損傷要因を完全に取り除くための本格解体修理を推奨し、また、現時点はメンテナンス程度でも維持できると判断される作品には対症的な処置をご提案する事もあります。

     

本格解体修理とは ◆

大規模な外科手術のイメージです。物理的に劣化をする文化財を後世へ継承するためには、いつかは本格的な修理が必要となります。
多くの作品は定期的に修理が施されて今日まで伝えられています。特に軸装(掛幅や巻子)の修理は、凡そ100年に1度の周期と言われており、手遅れとならないタイミングで定期的に行う事が望まれます。
本格解体修理では、すべての裏打紙の取替え、絵具等の剥落止、酸化物の除去、欠損部の補填などが基本的な内容となります。
再使用が困難と判断される表装裂地や下地骨の取替えなどもこのタイミングで行います。
また、取替える事となった裏打紙や表装材料などについては、本紙とともに時代を経た貴重な文化財の一部として、別置保存できるように整えてすべてご返却致します。

     

対症修理(維持修理) ◆

本格的な解体修理を行う段階ではないと判断される作品に対し、総合医療的な考え方に準えて保存性を高める事を目的とした保存処置や保護対策を検討します。
その結果として、現時点では大規模な解体は行わず軽微な処置によって延命させるという方法を選択する場合があります。
加えて、保存箱や保存に関わる補助器具(太巻添軸など)を作製するといった文化財を維持する上での必要最小限の対応をさします。
同時に、処置時点の状況や取扱いに対する注意点等をご報告し、管理活用や本格修理時期の目安にして頂きます。

ミュージアムクリーナを用いたカビの除去

     

特殊事例への対応 ◆

伝統的な技術や材料だけでは対応しきれない緊急を要する特殊な事例もございます。
特に国、地方公共団体管掌の文化財および資料類については、個別対応のご相談を受け付けております。
お気軽にお声がけ下さい。

文化財に含まれる有害物質の除去の様子




〇東日本大震災における津波(海水)被災文化財への処置事例

海水に浸水した文化財については海水に含まれるミネラルを含んだ塩分が損傷を引き起こす可能性があります。
特に塩分は湿気を帯びやすい性質を持っており、含まれているミネラルを栄養としてカビが発生しやすい状態となっています。
作品の表現を維持する事を基本に据えた、適切な技術による脱塩処置(塩化物イオン除去)が望まれます。

浸水によりカビの生えた文化財

HACH試験紙を用いた塩化物イオン濃度測定の様子

※参考文献
津波により被災した文化財の保存修復技術の構築と専門機関の連携に関するプロジェクト実行委員会,(公財)日本博物館協会,ICOM日本委員会『安定化処理(2015改訂版)~大津波被災文化財保存修復プロジェクト~』2015

     

コンディションチェック業務 ◆

文化財は日々劣化していきます。空気、光、温湿度の変化などがその要因で、地球上に存在している以上、避けられません。さらには、カビや虫、人的な作用による要因も劣化損傷の原因となります。
それは安定した収蔵環境にある文化財であっても同様であり、作品の状態を定期的に点検する事は早期発見につながり、初期対応が可能となります。
弊社では、これまで美術館などにおいて大規模なコンディションチェック業務など、現状を記録報告する活動にも積極的に取り組んで参りました。保存方法に対する助言も含め、作品の状態確認のお手伝いをさせて頂きます。

収蔵庫内での作品の状態を記録

     

保存器具の製作 ◆

保存箱(桐製・中性紙製)や保存に関わる補助器具(太巻添軸など)、展示容器を兼ねた特殊保存箱や保管用収納庫の製作など、文化財の保存に対して小ロットから多角的にご提案させて頂きます。

桐製太巻添軸・桐製印籠蓋箱

中性紙製太巻芯・中性紙製保存箱

中性紙製保存箱
(※写真は展示機能付きタイプ)
PAT試験通過素材/低反射アクリル

桐製倹鈍蓋箪笥

     

保存環境への提案 ◆

公益財団法人 文化財虫菌害研究所認定のIPMコーディネータ資格を有する職員を始めとし、文化財を保管されている環境などについてご提案いたします。

収納箪笥内の温湿度管理用に設置したデータロガー

     

設計業務 ◆

文化財を修理するためには適切な仕様策定が必須です。
手抜き工事を戒め、且つ、過剰修理も回避しなくてはいけません。

弊社では、目の前にある作品に対し今どのような損傷が生じていて、どのような手当てが必要かを検討し、修理後の保管環境やご事情などをお聞きした上で最善と判断される技術と材料を用いた仕様を提案致します。

文化財の寿命は非常に長いものです。100年の寿命換算でご検討頂く事が必要と考えます。

設計業務として対応する際には、より中立的な立場を意識し提示しております。提示させていただく内容に対してはご納得頂けるような説明を心掛けております。

     

複製(レプリカ)制作 ◆

展示や教育普及等を目的とした複製(レプリカ)制作のご相談に応じます。協力会社との綿密な連携により各種ご要望に見合ったご提案をさせて頂きます。
印刷方法や印刷する素材により完成品の精度は大きく異なります。国宝、重要文化財の取り扱い実績を持つ弊社がしっかりと監修致します。




和額レプリカ(※コロタイプ印刷を採用)


「三十帖冊子」構造レプリカ

     

高精細デジタル写真記録 ◆

展示や教育普及等を目的とした高精細デジタル写真記録のご相談に応じます。協力会社との綿密な連携により、各種ご要望に見合ったご提案をさせて頂きます。
複製制作も可能な高精度なデジタル記録は、文化財の安定的な活用方法の選択肢に広がるものと考えております。保存修理や応急修理を終えるタイミングで記録される事例も増加しております。

     

啓蒙活動 ◆

修理の作業内容についての各種報告会での発表や展示に対するご協力、大学を始めとする特別講義などの対応も行っております。現在当社取締役3名は、将来有望な学生に対して非常勤講師として授業を受け持っております。大学以外にもシンポジウムでの事例報告やワークショップ講師、各種講習会での講義など、少しでも多くの方々に文化財修理や伝統材料の必要性を伝えていくための活動に力を入れております。

     

活動実績 ◆

書籍
・「装潢修理技術を応用した日本の近現代紙資料の修理」『未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復』東京文化財研究所,2016


学会発表等
・早川典子,君嶋隆幸,畠中芳郎「老化を利用した小麦デンプン糊の接着力調整に関する研究」『文化財保存修復学会第35回大会要旨集』,2013
・山田祐子,加藤雅人,楠 京子,井上さやか「文化財修復材料として使用する除去可能な色材の検討」『文化財保存修復学会第36回大会要旨集』,2014
・山之上理加,加藤雅人,小笠原温「接着剤を塗布した和紙の力学的性質について」『文化財保存修復学会第36回大会要旨集』,2014
・鈴木晴彦,大山龍顕,森田早織,永島守,日野克紀,大橋拓子,八木三香「被災紙本墨書資料の安定化処理方法と実施計画」『文化財保存修復学会第37回大会要旨集』,2015
・鈴木晴彦,米倉乙世,三田覚之,沢田むつ代,平河智恵,下田純平,土屋裕子,神庭信幸「楮紙を用いた微加圧式マウント法の応用とその効果―東京国立博物館における上代染織品の活用と保存の両立―」」『文化財保存修復学会第37回大会要旨集』,2015
・楠 京子,山田祐子,加藤雅人,君嶋隆幸,井上さやか「キンベル美術館所蔵 二十五菩薩来迎図 修復事例報告」『文化財保存修復学会第37回大会要旨集』,2015
・楠 京子,山田祐子,加藤雅人,君嶋隆幸,井上さやか「シンシナティ美術館所蔵 源氏物語図屏風 修復事例報告」『文化財保存修復学会第37回大会要旨集』,2015
・貴田啓子・堀まなみ・大場詩野子・古田嶋智子・池田和彦・犬塚将英・早川典子「ジェランガムゲル処置による紙資料への影響」『保存科学 第57号』(独)東京文化財研究所,2018
・山之上理加・加藤雅人・小笠原温・中村春佳「ノートの背くるみ修復材料の検討」『文化財保存修復学会 第37回大会要旨集』,2015
・㈱修護 「重要文化財 琉球芸術調査写真〈鎌倉芳太郎撮影/〉のうち大学ノートおよび重要文化財 近代教科書関係資料のうち掛図・掛幅の保存修理について」『一般社団法人国宝修理装潢師連盟 第23回定期研修会報告集』一般社団法人国宝修理装潢師連盟,2018
・加藤雅人・池田和彦・中村春佳・田草川順子・橋口綠「重要文化財 近代教科書関係資料 保存修理のための脱酸性化処置方法」『文化財保存修復学会 第39回大会要旨集』,2017


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